[ 車の理論と、基礎知識が自然と身につく情報誌!]

 車の事典
   中高年と初心者のための『車読本』

             by CARLIVE SEEKER『車は1/1の模型だね』
 
                         
                      − 第18号 2006.4.10 −
   
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  ☆皆様、お元気でしたか!!
      ご購読いつもありがとうございます。
                      
         そして、はじめての方には、ご登録ありがとうございます。
  
    ◇これからも皆様方に、愛され、支持される、
     メールマガジンを配信できるよう、努力してまいります。

     よろしくお願いいたします。

    ‐このメールマガジンは‐

    難しいクルマの専門用語を、極力やさしい言葉におきかえて
    中高年、初心者の皆様方にも、ご理解していただけるように
    お伝えしているつもりですが、

    時に、専門的な用語をつかったほうが、ご説明しやすい場合
    もあります。

    そのような場合でも、用語の解説を付記していきますので、
    ご安心ください。

    また、このメールマガジンを読み進めていくことで、
    自然と専門知識を身につけ、ご家族やお友達に、ちょっぴり
    うんちくを傾けられてはいかがでしょうか。

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    それでは、今日もご一緒に!

   ☆やさしい自動車工学

    前回までに述べてきた、

    走行抵抗のなかでも、とくにクルマの生産技術による影響や、
    整備等の影響を、もっともうけやすいのが「ころがり抵抗」
    なのです。

    極端な言い方をすれば、
    路上を走る前に決まっている部分と言えるのです。

    この「ころがり抵抗」は、エンジンから駆動輪までの伝導効率が、
    大きく拘わっているので、
     
    工作精度、仕上げ精度、組み立て精度などの生産技術や、生産精度
    を向上させ、伝導効率を高い水準に維持することが必要なのです。

    要は、高度な生産技術と、優れた品質管理によって生まれてきた
    クルマは、

    エンジンのパワーのロスを極力抑えて、
    エネルギーの伝達が、スムーズに駆動輪に伝えることが出来ると
    いえるのです。

    まだまだ、ころがり抵抗に関係する要素は、いろいろ有りますが
    これ以上は省きます。

    それでは今日のテーマです。
   
    ▼[空気抵抗]

    「走行抵抗」の中でも、わたしたちが実際にクルマを運転していて、
    一番わかりやすいのが、この空気抵抗ではないでしょうか。

    向かい風をうけて走っている時、極端にクルマが重く走りにくい
    と感じた事があると思います。

    反対に、追い風をうけて走ると楽に走れますね。

    またつよい横風をうけた時など。ハンドルを突然とられたりして
    怖いおもいをした時もあるでしょう。

    このように、
    いろいろな空気の抵抗をうけながら、走行しているわけですが、
    この抵抗は速度が速くなるほど大きくなるのです。

    そしてこの抵抗を「空気抵抗」air resistance と言います。

    もちろん、ここで言う速度とは、
    空気との相対的な速さのことを指しているので、

    風のあるときは、風速を条件に加えてクルマの速度を修正する
    必要があります。
  
    たとえば、風速10mの向かい風をうけて走行しているとします、

    このときのクルマの速度は、スピードメーターの示している
    速さ(実速)に、時速36kmを加えて修正する必要があるという
    ことです。

    航空機で言うところの「対気速度」のことですね。

    しかし実際に走行しているときにうける風の影響は、
    風向、風速も常に変化しているので、簡単に修正しきれない

    部分であり厳密な実験では、風の静かな時(所)を選んで
    行う必要があるのです。

    そのために、
    とくに規定しないかぎりは、風速を 0 と考えて、
    つまり車速は、空気との相対速度と同じにするということです。

    ◆「空気抵抗」は次のような抵抗から成り立っています。

    1)形状または圧力抵抗       58%

    2)凹凸抵抗            14%

    3)表面抵抗             9%

    4)冷却および換気による抵抗    12%

    5)誘導抵抗             7%

    注。数値は実験車両によっても変化するので、あくまでも
      参考数値として考えてください。

    もともと、2)は 3)のなかに含まれるのですが、
    その中にあっても、大きな割合を占めているので、
    便宜上、あえて分けて考える事にしました。

    ◆「形状または圧力抵抗」

    この抵抗は、クルマが走行することによって、クルマの前面に
    かかる空気の圧力と、後部に生じる負圧との圧力差によるもので
    車体の形によって条件がかわります。

    いいかえれば、クルマが速く走れば走るほど、クルマの前面に
    大きな空気の壁ができ、これが抵抗となってクルマの走行を
    拒もうとするのです。

    また後部には、前面からクルマの表面を伝って流れてきた空気が、
    車体後部で過流となり負圧が発生し、クルマを後ろにひきよせ、
    前進を妨げるのです。
   
    つまりクルマのスタイルを流線型(レーシングカーにみられる
    ような形)にすることによって、車体の形状抵抗を少なくして
    空気の圧力抵抗を小さく出来るということです。

    ◆「凹凸抵抗」

    車体の下面は、エンジン、排気系統、伝導系統、サスペンション
    装置などの凹凸が激しいので、その抵抗は上記の割合を占める
    ほどです。かなり大きな抵抗値ですよね。

    実験では、クルマの下面にキャンバスを張っただけで、空気抵抗
    を6%前後も減少した例や、

    風洞実験で床下の整形により12%抵抗を減らした例もあるのです。

    またクルマが高速化になるにつれて、
    車体下面の整形とその形状(高速時の揚力防止)が、大変重要に
    なってくるわけです。

    なお、この「凹凸抵抗」には、

    窓、マスコットの類、ドアミラー、ドアハンドル、アンテナ、等々
    のボデー外部にある凹凸によるものを含んでいます。
   
    ◆「表面抵抗」

    この抵抗は、車体の表面を流れる空気と、車体表面との摩擦抵抗を
    いいます。

    車体が流線型化して、他の空気抵抗が少なくなると、この表面抵抗
    は最後まで残されるため、全体に占める割合は、大きくなるのです。
  
    ◆「冷却および換気による抵抗」

    ちなみに、エンジン冷却用の空気取り入れ口を、ふさいだだけで
    空気抵抗は、10〜20% も低くなるといわれており、

    冷却用の空気の抵抗は、無視できないのです。

    また換気のための、

    空気の取り入れ、取り出し口の位置とその方法や、
    車内における、空気の流れの抵抗を減らすことなどが、
    これからも重要な研究課題となりますね。


    ◆「誘導抵抗」

    航空機の翼に働くように、高速走行時には、車体を持ち上げようと
    する揚力が発生します。
    
    この揚力のために生じた抵抗を、誘導抵抗といいます。

    レーシングカーなどの超高速で走る車体には、

    この誘導抵抗を減らすために、航空機の翼を上下、逆にしたような
    ウイングで、ダウンフォースを発生させているのです。

    注。ダウンフォース : 揚力に対する抗力。
                   揚力に逆らって車体を下方におしつけよう
                   とする力。

    このように、「空気抵抗」と言えども、
    様々な要素をもった抵抗から成り立っているんですね。
        
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   ☆やさしい航空工学

    ここでは、

    筆者のライフスタイルであり、また専門分野の一つでもある、
    航空工学について少し遊んでみたいと思います。

    どうぞ楽しんでみてください。

   ▽【大気の構成】

    大気の構成をその性質から、六段階に分けたものです。

    研究者によっては、多少の違いがあるようですが、
    ここでは、上記の方法に従って述べていくことにします。

    しかも、これらの階層の境界は、はっきりと区別されている
    わけではなく、かなりの厚さをもって変化をしているという
    ことです。

    その層は、
    たとえば、対流圏と成層圏との境界面は、数kmあり、
    化学圏と電離圏は、数10kmにもわたっています。

    かっては、対流圏の上層部は、すべて成層圏と呼んでいた時も
    あったんですね。

   ◇「対流圏」Troposphere

    この対流圏の説明については、先の16号「標準大気」で述べて
    おりますので、ここでは省略いたします。

    また全大気の体積中、1/100以下のこの範囲に、
    全大気の75パーセント程度の量の空気を含んでいるのです。

    この厚い空気の密度によって、
    気圧が生まれ我々生物が、生息できているのですね。

   ◇「成層圏」Stratosphere

    対流圏のすぐ上にあって、高度12〜30km、温度−50℃でほぼ一定。

    対流圏と成層圏との境を圏界面 tropopause といい、
    その高度は、赤道付近でもっとも高く、

    緯度が高くなるにつれ、高度は低くなっていきます。

    また同じ場所においても、季節によって変化するのです。

    日本では、夏はだいたい15kmくらいで、冬は9kmくらいの
    高度になります。
    
    夏は高く、冬には、低くなるんですね。

    このような、大気の変動をみると、いかに我々の住む対流圏の
    働きが、成層圏におよぼす影響が大きいものか、良くご理解を
    いただけたと思います。
   
    そしてここ成層圏での大気は、

    まったく安定した状態で、雲は無く、低温(−50℃)で、
    且つ、空気の希薄なことからも、航空機とくにジェット機に
    とっては、すばらしい好条件の飛行空域といえるでしょう。

    皆さんが航空機での海外旅行で、体験されていることですね。

   ◇「化学圏」Chemosphere または「オゾン層」Ozonosphere

    ここは成層圏の上にあり、高度30〜80kmにおよび、多くの
    オゾンを含んでいるため、高温となっている部分です。
    
    またここでのオゾンの重要性が、
    我々に大きな影響を及ぼしていることは、すでにご承知のこと
    とおもいます。

    このオゾンの総量を、1気圧に圧縮したとして、
    先の号でも説明した、いわゆる「標準大気」の状態にすれば、
    50kmの層が、厚さわずか3mmにしかならないのです。

    いかにこの「化学圏、オゾン層」の脆弱性の上に、
    我々の日々の生活が成り立っているか、重ねてご理解いただけ
    たと思います。
    
    環境問題が叫ばれて久しく、

    ややもすると、日常の生活にながされて、ついうっかりと
    見逃している、自身のいることも否めません。

    自戒をこめて、猛省です。
   
   ◇「電離圏」または「電離層」Ionosphere

    オゾン層の上にあり、高度80〜400km、再び低温〜高温に移り、
    2000℃以上の高温となっていることは、前の号で述べた通りです。

    この高温度によって、空気の一部が電気解離している部分を、
    電離圏または電離層と呼んでいる。
    
   注。電離 : 空気中の電荷をもたない(電気を帯びていない)
           中性の分子、原子が電気を帯びた原子、原子団
           に分かれる。

    その要因は、光電効果とおなじで、太陽光線に含まれる紫外線が、
            窒素や酸素にぶつかって電子を追い出すためと考え
            られています。
    
    またよく知られているところでは、

    ラジオや無線通信などに使われている、短波の波長(この波長は
    直進する性質)をもつ電波が反射して、地球上、遥か遠方まで
    伝わっていくのも、この電離層による反射のためなのです。

    そしてこの電離層も、

    何層かで構成されていて、季節や時間帯(昼間、夜間)でその
    高度も変化しています。
  
   ◇「中間圏」Mesosphere

    電離層の上にあって、高度400〜1000km、

    電離圏から宇宙空間へ移る、中間に位置していることから、
    このように呼ばれるのですね。

    ごくまれに、オーロラも見られるが、あまりにも希薄な大気の
    ために電離現象は示さない。

   ◇「外気圏」Exosphere

    さあ!いよいよ大気の最上階、最上限となる範囲が、外気圏
    というのです。

    地上から遠く1000km以上離れたここ外気圏は、ほとんど真空
    にちかく、ごくわずかの空気分子が互いの衝突によって空間に
    とびだしていく、大気の最高到達高度!なのです。
        
    これより高くは、‥‥ まさに宇宙空間。 
    
                     ‥‥‥ 。

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    今日の本題。

    ◎車を知る【構造編 エンジン】

     ◆[カムシャフト]

    エンジンの吸気、排気行程において

    新鮮な混合気や、燃焼行程をおえた高温高圧の燃焼ガスを、
    燃焼室の内外へ導く吸気バルブに排気バルブ。

    これら各バルブの開閉をコントロールしているのが、
    カムシャフトです。
    
    一本のシャフト上に卵型の断面をもつ回転部品です。

    この回転するカムの外周が、卵型をしているために回転距離に
    差が生じ。

    この距離の差が、バルブの開閉時間及びタイミング、間隔等を
    決めています。
    
    またこのカムの形状を変えることで、エンジンの吸、排気効率
    はもちろん、エンジンの性格を著しく変化させることもできる。
    
    そしてカムシャフトの本数によっても、その効果は変化し。
    
    エンジン性能特性の決定に、影で一役買っていたのですね。
               
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   ◆ 編集後記 ◆

    今日、この原稿のある項目。

    「成層圏」について書いている時、
    ふと懐かしい思い出がよみがえってきました。

    そこで、
    今回、趣きをかえてそれを取り上げてみます。

   −あの日 あの時−

    筆者はこの成層圏の呼称を目や耳にするとき、
    そのつよい個性と共に蘇えってくる、一台の名車があるのです。

    1970年、イタリアはトリノでのモーターショー。

    そこに、世界中のモーターファンの度肝を抜く、一台のクルマ
    が参考出展される。

    当時、世界中に、ヒット作品を次々と送り出していて、
    日本でもすでに多くのファンをもち、
    その名も皆の知るところ。‥‥ 誰あろう?

    イタリアきっての、いや、世界屈指の名門カロッツェリア。
   
    ヌッチオ・ベルトーネが、これもまた、イタリア名門メーカー、
    ランチア社と組んで世に問うた、渾身の一台!

    注。【ヌッチオ・ベルトーネ】

      ベルトーネ社の二代目、カロッツェリアでありながら、
      生産部門を持つ、デザインの制作、プロトカーの製造まで
      おこなう。

      彼の時代に、ジョルジェット・ジウジアーロ、
      フランコ・スカリオーネ、マルチェロ・ガンディーニ、
      等々、名デザイナーたちを輩出する。

      特に、このガンディーニはストラトス誕生の為の
      チーフ・デザイナーを任されたとも言われている。
    
    参考出展の試作車とは云え、
    
    そのスタイルを目の当たりにしたとき、
    会場に居合わせた多くの人達から、驚きと感嘆のどよめきが
    湧きおこったのは、いまさら言うまでもない。
    
    それほどまでに、鮮烈な印象をあたえたのです。

    まさに、その命名が示すように、
    成層圏の彼方から・・・忽然と舞い降りてきた一台の未来の車。。

    その名も、『ランチア・ストラトス』

    その後、幾度の諸元変更をおこない。

    市販されるや、たちまちレースに登場。
    当初は不運のトラブルに泣くも、
    1973年4月には早くも念願の初優勝!を飾る。

    それからの約7年間、世界のラリー界に王者として君臨しつづける。
    

    あれから30余年経た今も、
         その思い出は褪せることなく、
                筆者の胸に熱くよみがえってきます。
        
                            ‐hiro‐
       
                    ‐平成18年4月8日 22時30分‐
                       
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